ホンモノの並行輸入なのに商標権侵害?! 条件を満たさない並行輸入品はホンモノでも違法です

国内に正規代理店のある海外メーカーや代理店から直接製品を仕入れ日本で安く販売する並行輸入。

ホンモノを仕入れてくれば何の問題ないと思われていませんか?

残念ながらそうはいかないのが知的財産権の難しさ。

 

ホンモノを仕入れてきても、それが「並行輸入の3要件」を満たしていなければ商標権侵害物品となるんです。

 

並行輸入品が適法となる3要件について詳しく説明していきます。

 

ホンモノの並行輸入なのに商標権侵害?! 条件を満たさない並行輸入品はホンモノでも違法です

 

並行輸入の3要件

並行輸入が適法である、言い換えると並行輸入品が国内の商標権者の権利を侵害していないと判定されるためには3つの要件を満たす必要があります。

ひとつずつ解説していきましょう。

 

並行輸入の3要件 その1

外国における商標権者またはその商標権者から使用許諾を受けた者により、当該商標が適法に付されたものであること

商標の同一性と呼ばれている要件で、メーカー直営店や海外の正規代理店から購入したホンモノじゃないとダメですよという意味です。

たとえ製品としてホンモノであっても工場の横流し品などは当然この条件を満たしません。

 

並行輸入の3要件 その2

その外国における商標権者と日本の商標権者が同一人または法律的もしくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより、その商標が日本の登録商標と同一の出所を表示するものであること

出所の同一性と呼ばれている要件で、日本の商標権者と海外の商標権者が同じ (または同じと見なせる関係)である必要があるという意味です。

たとえば日本国内の商標権者が海外本社 (海外の商標権者) の日本支社である場合や、海外本社とライセンス契約を結んだ正規代理店である場合が本要件を満たしている状態にあたります。

 

並行輸入の3要件 その3

日本の商標権者が直接または間接的に商品の品質管理を行い得る立場にあることから、その商品 (並行輸入品) と日本の商標権者の商品とが、登録商標の保証する品質名で差がないと評価されること。

品質の同一性と呼ばれている要件で、並行輸入品と日本の正規代理店から販売されている製品の品質が同じでなくてはならないという意味です。

 

例えばどういうこと?

要件2と要件3は少しわかりにくいと思いますので、実際の判例を元に説明します。

 

フレッドペリー事件 (最判平成15年2月27日)

事件の概要は以下になります。

 

  1. F社 (英国) がフレッドペリー商標の現地商標権者である
  2. 日本の商標権者はF社の親会社であるH社
  3. シンガポールにF社がライセンス契約したO社があった
  4. O社はF社とのライセンス契約の制限条項に違反した方法で第三国の工場にポロシャツを下請製造させた
  5. 日本の輸入業者がO社が下請け製造させたポロシャツを日本で輸入販売
  6. 日本の商標権者であるH社が日本の輸入事業者を商標権侵害で訴える

 

最高裁は真正商品 (並行輸入の3要件を満たした商品) の並行輸入にあたらないという結論を出し、このとき上で説明した並行輸入に関する3要件が示されました。

本案件では、dについてこのような状況では商標権者の品質管理が及ばないとし、要件3を満たさいない可能性があると判断されました。

 

コンバース事件 (知財高判平成22年4月27日)

事件の概要は以下になります。

 

  1. 日本の輸入事業者A社は米国コンバース社より商品を並行輸入し国内で販売
  2. 米国コンバース社が倒産
  3. 新米国コンバース社が日本における靴の商標権を倒産した旧米国コンバース社より取得
  4. 日本の商社I社が新米国コンバース社より日本における靴の商標権を譲り受ける
  5. 日本の輸入事業者A社は引き続き新米国コンバース社より商品を並行輸入し国内で販売
  6. 日本の商社I社が輸入事業者A社を商標権侵害で訴える

 

フレッドペリー事件同様、本件も真正商品(並行輸入の3要件を満たした商品) の並行輸入にはあたらないという結論が出ます。

商社I社と新米国コンバース社は資本関係も無くまた正規代理店等のライセンス契約を結んでいたわけでも無かったため、両者の間に「法律的もしくは経済的に同一人と同視し得るような関係がある」とは見なせない、すなわち要件2を満たしていないというのがその根拠でした。

並行輸入を開始したaの時点では適法であったにも関わらず、商標権者の事情により途中から商標権の侵害状態となってしまった例です。

 

まとめ

たとえホンモノを並行輸入しても、それが真正商品と見なされなければ商標権の侵害となる可能性があります。

またコンバース事件のように、並行輸入開始時は適法であったにも関わらず商標権者の事情によりいつのまにか商標権を侵害した状態になることもあります。

電気製品を並行輸入する際は、上で説明した並行輸入の3要件を満たしているかどうか、しっかり確認するようにしましょう。